ハチミツ
ミツバチが草木の花蜜(かみつ)を集め、それを唾液腺(だえきせん)から出る
酵素の作用で分解し、さらに濃縮したもの。
[成分]
蜂蜜の成分は、主としてショ糖の分解生成物である。
花に含まれている花蜜は、主成分がほとんどショ糖であある。
花蜜をミツバチが巣へもって帰り、ミツバチの口腔(こうこう)のそばにある
唾液腺から分泌するスクラーゼとよばれる唾液腺酵素で、果糖とブドウ糖に分解する。
これをミツバチがはねを動かして風を送り、濃縮して蜂蜜に仕上げる。
濃度はだいたい80%程度で濃縮される。
この程度だと、ほとんどいつまでも腐敗せずに貯蔵することができる。
このとき、ミツバチの唾液腺から分泌されるパントテン酸といった有用な物質が蜂蜜に混入するが、これが花蜜の栄養的な価値観を生んでいる。
また、もともと花蜜には各種の有用な成分が多く含まれている。これが蜂蜜の食品価値を高める理由である。
蜂蜜は花蜜の影響を直接受ける。とくに香りは、花蜜が直接影響している。
例えば、レンゲの花からミツバチが集めたものは、レンゲの香りがし、ミカンは
ミカンの風味がでるので、嗜好により好みの蜂蜜が選ばれる。
日本人の嗜好にあいにくいものもあるので、精製が行われるが、精製したものは本来の蜂蜜の風味が失われるので、レンゲなど比較的嗜好度の高い風味のものと混合して販売されることが多い。
栄養的な成分としては、先にあげたミツバチの唾液とともに混入するパントテン酸のようなもののなかに、花蜜の中に含まれていた各種のビタミンや無機質のようなものも含まれる。
しかし、もとの花の蜜の種類により、その含量はかなり異なる。
無機質は料理にも影響を与え、鉄分の多い花蜜からつくられた蜂蜜を紅茶に加えると、タンニンと結合して激しい黒変を呈するが、それほど紅茶の色に変化しないものもある。
[主な種類と特徴]
レンゲの花蜜からつくられる蜂蜜はもっとも日本人に好まれる香りと甘みをもつ。レンゲ蜂蜜は色が薄く、香り、味ともに淡白でくせがない。
アブラナ(ナタネ)蜂蜜は淡黄色で白い細かい結晶が出やすいが、香りが穏やかで、日本人向きである。
ニセアカシア蜂蜜は淡色で香りがよく、上質の蜂蜜とされている。
ミカンおよびオレンジ蜂蜜は特有の柑橘(かんきつ)類の香りがあり、色もやや濃い。
ソバ蜂蜜は非常にくせがあり、暗い色でもあるため、日本では精製して使用することが多い。
クリ蜂蜜もソバ蜂蜜と同様で、暗い色ですこし渋味がする。頃ーバー蜂蜜は黄金色で風味がよい。
[規格]
蜂蜜は規格上、純粋の蜂蜜と糖分を添加したものでは表示が異なり、他のものを添加したものについては、公正規約により単に「はちみつ」という表示ができない。
この場合は、「加糖はちみつ」といった表示が必要である。
このほか、ビタミンを添加したものなどもあり、これらは加工したことを示すことが義務づけられている。
[利用]
蜂蜜は菓子などの材料として広く用いられるほか、健康的なイメージが強いため、砂糖のかわりとして使用される場合が多い。
しかし、糖分は砂糖と同様で、とりすぎは肥満につながる。エネルギーは砂糖より低いがかなり高い。
砂糖と違い、果糖とブドウ糖といった還元糖になっているので果汁などの成分と長く保存するとアミカルボニル反応をおこし褐変する場合があるので、ホームリキュール、たとえば梅酒などの糖分としては不適当である。
(日本大百科全書より)
[単語の説明]
口腔(消化管の最初の部分で、医学的には口腔外科(こうくうげか)
と「こうくう」と読むが、ここでは「こうこう」
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